今までのコンサートの記録

第109回コンサート
石坂団十郎 チェロリサイタル
DANJULO ISHIZAKA Cello Recita
ピアノ: 岡田 将
Piano: MASARU OKADA
04.4.24(土)
Sat.,Apr.24.2004
プログラム
シューマン: 幻想小曲集 Op.73
ベートーヴェン: ピアノとチェロのためのソナタ 第3番 イ長調 Op.69
ヤナーチェク: チェロとピアノのための”おとぎばなし”
フランク: ソナタ イ長調
コンサート寸評

またまた大きな二つの才能に出会えたコンサート。 ASO第109回は、石坂団十郎さんのチェロコンサートと銘打ってあるが、石坂さんとピアノの岡田さんのデュオコンサートと呼びたい。緻密な音楽の創造は、ソロと伴奏という関係を超えて、ともに一つのものを組み立てるという、共演の感じだった。自己主張し合うという「競演」とも少し違うし、「協演」とも違う。曲目はシューマンの幻想小曲集op.73とベートーヴェンのチェロソナタno.3。後半がヤナーチェクのチェロとピアノのための“おとぎばなし”、フランクのソナタイ長調 (ヴァイオリンとピアノが原曲)。石坂さんはどんなffでも音を割らない。ぶつけたり力みすぎての音は出さない。丁寧な音という基本が染み込んでいる。又、岡田さんも極めて小さいppも見事にコントロールする能力を持っている。そのお二人の噛み合いが絶妙なのは、そんなに長くないというコンビ歴においては、優れた演奏能力は言うに及ばず、基本的な音楽の会話がもともと備わって、しかも非常にお二人の音楽が近いからという感じがする。一曲目のシューマンから、よく音楽が流れ、きちんとコントロールされながらも想いのたけが伝わって来て、オーソドックスで、真面目で且つ硬くなく心地いい。ベートーヴェンも同じ印象を持った。まだ無垢の感じがあって、このまま大きくなっていけば正に巨匠の音楽になっていくのではないかと思うほど、心から素直に音楽を楽しませてくれた。後半の二曲は、逆に感覚的に色や個性を立てて表現する必要があって、きっと練り込んで行くうちにあるスタイルを作っていくのではないかと感じた。腕前が確かなのは最近の若い演奏家は押しなべてだが、音楽がいい演奏家にはなかなか出会わない。25歳と30歳でこの表現力、本当に今後が楽しみな演奏家。是非また聴きたいお二人。音楽と一緒で性格もとても素直。石坂さんはドイツ語を母語にしているようだが、ビールはだめで日本酒はオーケー、特に熱燗!日本食、漬物も大好き、メロンパンも好物!とか。ステージもオフステージも変らず屈託なく、真面目で、そして楽しい。アンコールは三曲。ドボルザークの「森の静けさ」、ロストロポービッチの「ユモレスケ」、サンサーンスの「白鳥」。揺るぎない技術と心ゆく音楽を披露して演奏会を閉じた。

(2004.4.24 松井孝夫)