今までのコンサートの記録

第102回コンサート
児玉 桃 プレレコーディング ピアノリサイタル <ドビュッシーを弾く>
MOMO KODAMA Pre-Recording Piano Recital<C.DEBUSSY>
2002.11.2 (土)
Sat.,Nov.2.2002
プログラム
ドビュッシー: スケッチ帳より
:ベルガマスク組曲
: 2つのアラベスク
:子供の領分
:レントよりも遅く
: マスク
: 版画
: 喜びの島
コンサート寸評

全演目私の好きなドビュッシーであった。
正直言って私が思い描いていた音とは違ったが、丁寧で真摯な、独自のシャープな色彩を持った音色であった。弾き手の音色へのこだわりが感じられる演奏であった。ドビュッシーではないがアンコールで演奏した展覧会の絵の“殻をつけた雛の踊り”など、とくに彼女の特徴がよく出た演奏だと思った。ヨーロッパの国々は陸続きなのにそれぞれが極めて個性的である。そのような国で生まれた音楽を再現しようとするとき、それらの国以外の演奏家にとって最も難しい国のひとつがフランスではないだろうか。

ドイツに住んだことがないとベートーベンが出来ないということはないだろうが、いわゆる印象派のフランスものを演奏するとき、例えば生活の中でパリの空気を吸ったことがあるかどうかは結果にかなり違いが出てくるのではないだろうか。
桃さんの場合、最も感受性豊かな時期にパリで育ったことがいまの彼女の音色にしっかり反映しているのだろうと思った。

家に帰って、当日のプログラムの殆どが入っているファーガス・トンプソンの CDを聴いてみたが、全く別の趣であった。当日一緒に聴いた仲間達が、個性的で“桃さんのドビュッシーだ”と言っていたことが更めて頷けた。
モンマルトルから育った多彩な画家達のようにいろんなドビュッシーがあっていい。今日の演奏も素晴らしかったが、10年後、円熟の域に達したときどんなドビュッシーに昇華していくのだろうか。また別の楽しみである。この感想を書きながら、こんな論議が出来る幸せをしみじみ噛みしめている。大橋君有難う。

(2002・11・7 神戸隆一郎 )