今までのコンサートの記録

第147回コンサート
松山 冴花(Vn)/ 津田 裕也(P) デュオ
Saeka MATSUYAMA,Violin/Yuya Tsuda,Piano
仙台国際音楽コンクール優勝者の共演
2009年5月23日
プログラム

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 Op.24「春」
 1.Allegro
 2.Adagio molto espressivo
 3.Scherzo,Allegro molto
 4.Rondo,Allegro ma non troppo
ドヴォルザーク:ロマンス ヘ短調 Op.11 B.38
シューマン:3つのロマンス Op.94
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
 1.Allegretto ben moderato
 2.Allegro
 3.Recitativo-Fantasia(Ben moderato)
 4.Allegretto poco mosso
コンサート寸評
ASO第147回 「松山冴花&津田裕也デュオ」コンサート

仙台国際音楽コンクール優勝者の共演と銘打って、ヴァイオリンの松山さんと、ピアノの津田さんのデュオコンサート。曲目は、前半が、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ5番「スプリング」、ドヴォルザークのロマンスへ短調Op.11B.38。後半がシューマンの3つのロマンスOp.94とフランクのヴァイオリンソナタイ長調。

曲目からして、たぶん情緒的な曲の表現に得手な奏者だろうと思ったが、そのとおり。ハイレベルの技術をひけらかすタイプではないが、テクニックは相当なもの。とりわけ、右手のやわらかさ、レスポンスの良さは特出もの。そのおかげで、様々な音色を、曲のニュアンスごとにいともたやすく表出できる。これは松山さんの大変な武器だと思う。楽器のせいもあろうが、ヴァイオリンの低い音をとてもたっぷり聴かせてくれる奏者で、このタイプは比較的珍しい。この意味でも個性的であり、魅力的。曲の取り組み方も奇をてらうことなく、まっすぐであることに好感がもてる。ベートーヴェンとドヴォルザークがとても心地よく聴けた。シューマン、フランクも、勿論秀演ではあるが、シューマンはなかなか難しい。情緒が無ければ話にならないが、思いがこめられたら、そこでちょっとにおいが出てしまう。フランクは構成がしっかりた曲なので、最初から曲にのめり込むと、クライマックスで大音響になってしまう。彼女はクライマックスでの音量に十分に持ちこたえられる奏者だが、そうなると香りやせつなさ、ゾクゾク感はやや後退する。好みや感じ方はいろいろあると思うが、とにかく稀に見る才能の塊で、どういうヴァイオリニストになっていくのか、とても楽しみ。目の離せない、というか耳の離せない演奏家の一人になりそう。アンコールはクライスラーの「愛の悲しみ」とドヴォルザークの「ロマンティックな小曲」の第一番。

伴奏の津田さんも良く合わせていて、とても安定したテクニックで破綻無く弾ききった。聴衆からすると、音楽的にはもう少し破綻があってもいいかとも思うが、今後個性的魅力が加われば、もっと多様な奏者になっていくのではないだろうか。
ともかく最近の演奏会ではあまり聴けない、十分心に染み込む音楽にめぐり合えたのがとてもうれしい。

(2009.5.23 松井孝夫)