今までのコンサートの記録

第136回コンサート
プレアデス・ストリング・クァルテット ベートーヴェン弦楽四重奏曲(3)
Pleiades String Quartet
2008年3月15日(土)
プログラム
L . V. ベートーヴェン
: 弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 Op.18-3 (1800年)
: 弦楽四重奏曲 第5番 イ長調 Op.18-5 (1800年)
: 弦楽四重奏曲 第15番 イ短調》Op.132 (1825年)

コンサート寸評

ASO第136回 「プレアデス・ストリング・クァルテット」(3)コンサート

プレアデスSQの、ベートーヴェンのクァルテット全曲を演奏するシリーズの第3回目。今回の曲目は、ベートーヴェン30歳の時の第3番と5番、そして亡くなる2年前の年に書かれた15番の3曲。この前期と後期の作品は25年の隔たりがあり、対比して聴くのは面白い。勿論、この25年間のベートーヴェンの作曲の変革や充実度には本当に驚かされるが、かといって、前期のものが物足りないということはない。前にも書いたことだが、ベートーヴェンの作曲には前と同じという発想はなく、いつでも革新的であり、挑戦的なのだ。そのスタイルこそベートーヴェン的なのだろう。

プレアデスSQについては、前回も音ががぜん変わってきたことを感じたが、ますますいろいろな音色、そしてアンサンブルの密度が濃くなってきたように思う。今宵の演奏も、第5番の3楽章あたりから、ぐんぐん深みのある世界に入り込んでいった。いつでもベートーヴェンを聴くとき思うのは、たたみ込んでいく速い楽章の間に、不思議な世界が存在している。あるときは天国であったり、癒しの場所であったり、はたまた絶望であったりもする……。緩徐楽章をどう表現するかは、ひとつの鍵のようにも思う。

毎度の事ながら、チェロの山崎さんの表現には驚かされる。一つ一つの音に生命力が漲っていて、様々な音色で表現する。テンポや切れ味も、その音楽を聴ける至福を感じる。ヴィオラの川崎さんの音色もやわらかく張りがあり、チェロとの音色も良く合うように思う。回を重ねるごとに変貌するプレアデスSQなので、ヴァイオリン巧者の松原さんと鈴木さんの色合いがヴィオラ・チェロにしっくり溶け込むようになれば、もっとすごいことになりそう。その上で更に緊張感のある世界を身近で聴きたいという欲求に駆られるのは、多分私だけではないだろう。ますます次回が楽しみだ。

(2008.3.15 松井孝夫)