今までのコンサートの記録

第145回コンサート
プレアデス・ストリング・クァルテット
PLEADES STRING QUARTET
2009年2月22日
プログラム

ベートーヴェン弦楽四重奏曲(5/6)
L . V. ベートーヴェン(5/6)・プログラム
: 弦楽四重奏曲 第 4番 ハ短調 Op.18-4 (1800年)
: 弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 Op.74「ハープ」(1809年)
: 弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 Op.131 (1826年)


コンサート寸評
ASO第145回 「プレアデス・ストリング・クァルテット」

ベートーヴェン弦楽四重奏曲(5)コンサート

プレアデス・ストリング・クァルテットのベートーヴェン弦楽四重奏曲連続演奏会が第5回目になった。あと1回で全曲演奏が完成する。極めて技量の高いメンバーによるクァルテットだが、それでも時を経て、回を重ねるごとに変貌してきた。そして今回に至っては、音色が揃うとか流れがうまく呼応しているとかいう以上に違ったものを感じた。今宵集った人の多くが感じたことではないかと思う。

よい演奏を聴いているとき、ふと我を忘れて、作曲家が一心不乱にその曲を書いている姿を思うときがある。とりわけベートーヴェンは胸キュンのところがある。聴力を失ってなお頭の中で音をかき鳴らす。そしてそこには、人間への微塵も揺るがない信頼やエールのようなものが感じられ、その強いメッセージが音楽の重要なファクターになる。今日の演奏は、正に、ベートーヴェンが現れて、音楽を熱く語っている如くの演奏だった。

曲目は、4番、10番「ハープ」、14番。初期、中期、後期の取り合わせだ。最初からベートーヴェンの鼓動が伝わってくる演奏で、そのうねりに圧倒される。初期とはいえ既にベートーヴェンスタイルを確立していて、フツフツとたぎるエネルギーを表出する音楽で、秀逸な演奏が見事にその鼓動をとらえていた。そして最後の14番は、同じベートーヴェンかというほど異なる音楽。世の始まりのカオスか、宇宙を彷徨する不思議な空間から始まる。ベートーヴェン晩年の宇宙世界だ。漲った意志とか思想を終始貫かねば、演奏としてもたない。それをさらに溢れんばかりの今日の演奏は、今宵ここに集った人の至福だ。

この会場では、もちろん音源から近いところで聴けるということはあるが、音楽自体がごく身近で鳴っている。ベートーヴェンが近くにいるという感覚を絶えず感じさせてくれる演奏だった。演奏後、チェロの山崎さんに、「ピチカート(指で弦をはじく)って、理屈でははじいたら後は衰退するだけなのに、山崎さんのはクレッシェンド出来るんですね。」と話したら、「ビブラートをかけたり、技術的に出来ること。」と仰っていた。そうなのかもしれないが、音楽の流れに生命感を与えられる希有の奏者だからこそ為し得る技だと思う。次回が最後とはもったいない。是非とも次のテーマを考えていただきたいもの。

(2009.2.22 松井孝夫)